2011年02月22日

シズ婆 1


サスケのおっさんとハル姫との幸せな生活に満足していたある日


母は仕事中に六十谷の田舎道で
ボロボロの雑巾のようなシズに出逢いました。



5年前の5月の夕方、大雨がやってくるとの予報であやしい空模様。
早く仕事を片づけて・・・と車で急いでいた時
狭い道の中央に何やら汚い雑巾のような物が落ちていました。
やっとこさそれを避け
仕事を終え
元来た道のそこを通ろうとすると
さっきの雑巾が
盛り上がってる。
ようやく猫が座っているとわかりました。

このままでは車にはねられてしまう。
そう思い持っていたタオルで包んで道端の畑の隅へ。
あまりの軽さと背中の傷に驚きながら
「あぁ、この子はもう死んでしまうな」と
母でもハッキリと分かりました。
でもまだかすかに温かく、心臓が動いているのが手に伝わりました。
連れて帰ったら・・・。

数分あれこれ考え
やっぱり無理や。

急いで車に戻って仕事場へ急ごうとする・・・
がラジオからはこの後大雨の天気予報が。

死んでいく者をまたほっておくのか!

その2年前
母の父は末期の病気で入院していました。
24時間体制の病院で家族の付添は必要ないとされていても
もう限界のところまできていました。
明日から泊ります。
と主治医に了解を得て帰る時
なにかいつもと違う・・・
と感じながら、
明日から
明日からもうずっと一緒やから

疲れた体と心を一晩休ませたかった。
明日からやから。

でも
父は明日まで待っていてくれませんでした。
一人で先に魂だけ家に帰ってしまったのです。

その年のお正月は病院で過ごしました。
父も不安だったのでしょう、
「帰りたい」とは一言も言いませんでした。
「じゃあ一回、えべっさんの日に帰ろうな」
と母が何気なく言った言葉を覚えていたのでしょうか
えべっさんの日の早朝、一人でさっさと帰ってしまいました。
明日がえべっさんだったのです。
「あぁ、私がえべっさんなんて言うたから」

どんなに後悔しても
とりかえしのつかない事をしたと
自分を責め続けました。
今も・・・。

どんな小さな虫も殺せなくなりました。
窓を開け外に逃がしてやる。
もう後悔はしたくない。

雨が降り出していました。

もう迷っている時間はなかった。
シズのまだぬくもりのある感触が手に残ってしまっていました。

自宅への帰り道のあの動物病院がもう閉まっていたら
家でこの子を看取ろう。
そう決めて、
またあの場所に戻り
シズを車に乗せました。



  


Posted by サスケ母 at 22:32Comments(4)