2011年02月26日

シズ婆 2


病院はまだ開いていました。

診察台で改めて見ると
背中には何か棒の様な物で突き刺した傷が4か所ありました。
先生は「人間がやった傷やな」と。
幸い内臓には達していませんでした。
あちこち毛がなくなって、
風邪もひいていて目はヤニでおおわれ
洗ってもらって出てきた目は貧血で瞳が上にいってました。
成猫なのに体重は1キロをきっていて
もう座る体力もありません。
あの時道に座っていたのは、最後の力を出したのでしょう。
歯は3本しかなく、歳をとって抜けたのか
栄養失調で抜けたのかわからない。
年齢不詳、雌の三毛猫でした。

体温は34度しかなく(猫は38度くらいが普通)
「この子は今晩もたんやろなあ」
と言いながらも先生は治療をして下さいました。
帰りには飲ませるのは無理かもしれないけどと言いながら
栄養たっぷりのドリンクと
飲ませる為の注射器をわけて下さいました。

あの嵐の夜をシズはなんとか生き抜き、
4か月の通院の後、ようやく猫らしい姿になりました。


一度別の病院で診てもらうと
「この子は猫伝染性腹膜炎を発症していて、
もう腹水がたまってきている。」
とまで言われた事もありました。
猫伝染性腹膜炎は猫の病気の中で一番恐ろしい病気です。
もう一か月ももたない、という事です。

病気で弱ってくるどころか、シズの反抗が始まりました。
病気がない事がハッキリするまで、
二階建ての小屋を買ってきて隔離していました。
その小屋から出してくれと暴れまくり
怪獣のような声でずーっと泣き叫んでいました。
あまりのうるささに
オトウサンは
「静かにしてほしいからコイツの名前はシズ!
珍獣シズゴンや!」と命名。
ようやく病院で名前が言える事となりました。
年齢不詳ですが、見るからにおばあちゃんって感じなので
シズ婆と呼ばれたり、
かわいくシィちゃんと呼ばれたり・・・。

それまで触って手入れもできていたのに
ちょっとでも手を伸ばせば爪でひっかき
残った歯ですばやく噛み付きます。
無理に捕まえようとすると
恐怖からか失禁し、便まで・・・。

人間にひどい事をされたのだから当然です。
母も人間なのだから、
シズにとって恐ろしい動物に映っているのでしょう。
分かっていても、
初めて接した猫がおっとりとしたサスケだったので、
母はその違いに困惑しました。

絶望し、夜も眠れず、
家族に迷惑をかけている事に自己嫌悪に陥り
精神的、肉体的にもまいってしまいました。
シズの鳴き声が「もう~かえる~」っとまで聞こえてきました。
この子はあの場所に帰りたいんじゃないか・・・。
戻してあげた方が幸せなのか・・・。

オトウサンが最後にもう一軒だけ診てもらおうと
猫に詳しいと評判の病院を訪ねてみました。
その病院は博士タイプの先生とアシスタントの猫がいるだけ。
すがる思いでシズの様子をお話しし、診察して頂きました。

「この子はヘビやトカゲなんかを食べてたようで、
お腹に虫がいっぱいおるだけです。腹膜炎ではありません。
今までノラだった子を家猫にするのは大変ですよ。
特にこの子は時間がかかりますよ。」
・・・先生の指から血が。
先生、ごめんなさい。

どんだけ嬉しかった事か
すぐに治療をして頂きました。
病気だから、懐かないからって
シズをあの場所に戻すという事は、捨てるという事です。
母がいつも怒っていた人達と同じことをしてしまうところでした。

検査の結果病気もなく、風邪も背中の傷も良くなりました。
でもシズの反抗は終わりませんでした。
シズが来てから4か月後、
小屋から出し、ウチの子として部屋の中に招き入れました。



最初はまったく無視!していたサスケとハルも
少しずつシズに慣れていきました。
シズも猫はオッケーでした。ホッ。

  


Posted by サスケ母 at 15:27Comments(4)